おぼえがき 1

我々はミルトンエリクソンの影響を大きく受けているが 彼は被験者が催眠下でトランス状態を変えないで話ができるようになるずっと以前に質問に応じて頭部や四肢の筋肉運動を行うのをしばしば観察した。彼の臨床家としての天才は 対象のイデオモーターシグナル 顔の表情および言語化などあらゆるニュアンスの観察と利用に元づいている。

※ミルトンエリクソン:ミルトン・ハイランド・エリクソンは、催眠療法家として知られる精神科医、心理学者。アメリカ臨床催眠学会の創始者で、初代会長も務めた。アメリカ精神医学会、アメリカ心理学会、アメリカ精神病理学会などのメンバー。
生年月日 1901年12月5日
死亡日 1980年3月25日
Wikipediaより

おぼえがき 2

もっとも一般的な誤解は 催眠にかかった時意識が失われるということである。これはほとんど誤解である。人々の多くは意識の喪失を恐れておりそのような恐怖が催眠の誘導を妨げることがある。実際には最も深い催眠の段階においてすら意識の喪失は起こらない。常に完全な意識性がある。このことを被験者に説明した場合でさえかなり深い催眠に入らない限り被験者は催眠の後で何も起こらなかったと感ずるかもしれない。
特別催眠にかかったという感じもなく ものうさ あるいはだるさの他 ほとんど何の感じも起こらない。
他の催眠に対する世間の考えは 被験者が自分の意思を放棄して 操作者の統制のもとにあるということである。事実、被験者は催眠されている間、いくらかのコントロールを操作者にゆだねることがある。しかし自分に与えられるどんな暗示も非常に明確に検閲され もしそれが意識的にも無意識的にも受け入れられなければおそらく実行されないであろう。もしそうでなければ催眠は無節操なものの手によってきわめて危険なものとなるであろう。

おぼえがき 3

誘導法のどれを選ぶかは主として経験と手腕に基づく問題である。催眠の経験に乏しいものは自分が最も自信をもって行うことのできる誘導法を用いるべきである。熟練した操作者はこれに反してその状況に応じて誘導法をえらぶ。

おぼえがき 4

不幸にして催眠を教える人の中には命令的な 力強い 支配的な誘導法のみを教えるものがある。これはそのほうがより速やかであり 時には教えるものの人格的な欲求のためである。サディズムなどの無意識的欲求や 神コンプレックス 権力への意思を持っているのであろう。時間が重要な意味を持つ状況があるし またほかの理由から支配的な技法の適当な場合もあるが それらはまれである たいていの状況においては許容的 保証的なよりゆっくりとした誘導法のほうがはるかに好ましいといってよい。たいていの人は支配されるのを好まない 許容的な技法を行えばラポールは増し意識と無意識的な両方の協力がより速やかに得られる。

おぼえがき 5

催眠を深めるために「もっと深くなる」という直接的な暗示に次のいずれかを加えると非常にうまくいく。

【1】『テストの達成』例えば腕の挙上、合掌テスト、眼瞼のカタレプシーそのほか何らかの現象を生ずること テストか 
あるいは何らかの現象を生ずることに成功すると 被験者はより深い催眠状態に入ってゆく傾向がある。

【2】『数の逆算』被験者にエスカレーターかエレベーターに乗って あるいは階段を歩いて降りていると想像させながら数を逆算させる。

【3】『沈黙の時間』操作者がないも言わないでいると 被験者の催眠が深くなっていくとあらかじめ暗示して 沈黙の時間を挟むj。

【4】『頭頂部や両肩の圧迫』操作者が被験者の体を圧迫しながら催眠がより深くなると暗示する。

【5】『優しく額をなでる』これは子供に対して大変有効である。

【6】『フォークトの分類法』これは短い導入の言葉 それに続く覚醒と起こった結果の討論 それからまた導入という反復から成り立つている このように5,6回繰り返すと回を追って催眠は深くなる。有効だが 時間のかかる方法である。

おぼえがき 6

強い情緒が自然催眠を生ずることがある。強い情緒がおこると勿論意識の喪失はないが 心の意識下の部分が動き出す傾向がある。そして「にげるか 戦うか」とか ほかの適切な行動の準備をする。被験者が催眠誘導に際し非常に怯えている場合は操作者は恐怖を利用してたやすく導入することができる。怯えている人はすでに催眠状態にあるか あるいはまさに催眠に入ろうとしているのである。この際より積極的で強力な誘導法のほうが許容的な方法よりも適している。そのような状況では被験者は普通非常に速やかに深いトランスに入るであろう。あまり良い被験者にはならないであろうと考えられている人が怯えている場合、強力に誘導するのが最も良い手段であるかもしれない。他方恐怖は抵抗を引き起こして催眠を妨害することがある。そして、催眠に入つていても自然にさめることがある。

powered by crayon(クレヨン)